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仙台市は母子4人の生活費を止め、「適法」と言い、訴えの却下を求めた

この記事は、行政における暴力の手段と行為の歴史的記録として書き記す。

2025年12月、仙台市は小学生3人を一人で育てる34歳の女性に対し、生活保護の支給を停止した。

理由は、通勤に車を使っていたこと。それだけである。

女性は仙台市若林区に住むパート従業員で、2020年から生活保護を受給していた。子どもたちが未就学だった頃、市は保育園への送迎のために父親から借りた車の使用を認めていた。その車は女性の所有物ではない。父親から借りているものだ。

子ども3人が小学生になり、2024年7月、女性は隣の区でパートの仕事を始めた。車なら約20分の通勤距離だが、公共交通機関を使えば片道約1時間半かかる。小学生3人を抱えるシングルマザーが、毎日往復3時間の通勤を続けながら子どもの世話をすることが現実的かどうか、想像すれば分かる話だ。

女性は通勤と子どもの通院のために車を使い続けた。

2025年9月、仙台市は女性に対し、車を処分し運転しないよう求める文書を通知した。父親の車を「処分しろ」と言った。女性が応じなかったため、同年12月23日付で、仙台市は生活保護の支給を停止した。

母子4人の生活費が止まった。

被害を受けているのは誰か

34歳のシングルマザーと、小学生の子ども3人。合計4人の人間が、仙台市の処分によって生活の基盤を失っている。

この女性はパート勤務で収入を得ようとしていた。生活保護に依存しているのではなく、自立に向けて働いていた。その通勤手段を奪い、通勤を事実上不可能にした上で、保護費まで止めた。「自立しろ」と言いながら自立の手段を断ち、手段を断った上で「保護の要件を満たさない」と切り捨てる。これは制度の運用ではなく、制度を使った排除である。

子ども3人は、この処分において何の当事者でもない。しかし保護費の停止は、3人の子どもの食費、光熱費、学用品費、生活のすべてに直撃する。仙台市は、子ども3人の生活も込みで止めた。

加害の主体と責任者

本件の処分主体は仙台市若林区保健福祉センター所長(=福祉事務所長)である。生活保護法上、保護の停止・廃止の権限は「保護の実施機関」すなわち福祉事務所長にある。

仙台市の行政の長は市長・郡和子(こおり かずこ)。2017年の初当選から現在3期目を務める。この処分は郡和子市政の下で行われた。

仙台市は本訴訟の被告として、答弁書で「何ら裁量の逸脱濫用も存在しない」「本件処分は適法」と主張している。これは個別の担当者が勝手にやったことではない。仙台市が組織として「この処分は正当だ」と法廷で表明している。郡和子市長は、この主張の最終責任者である。

加害の主体: 仙台市(若林区保健福祉センター)
行政の最高責任者: 仙台市長・郡和子(3期目)
若林区長: 髙橋洋子(たかはし ようこ、2024年4月着任)
処分権者: 若林区保健福祉センター所長(=福祉事務所長)・ 原 孝行

仙台市は法廷で何を言ったか

2026年1月7日、女性は仙台地裁に保護停止処分の取消しを求めて提訴した。原告側代理人の太田伸二弁護士は「生活保護の適用のあり方を問いたい」と意見陳述した。

2026年4月28日、第1回口頭弁論が開かれた。

ここで仙台市は二つのことを主張した。

一つ目は、「本件処分は適法であり、何ら裁量の逸脱濫用も存在しない」。車を手放せという指示に従わなかったのだから、保護を止めたのは正当だ、と。

二つ目は、訴えそのものの却下を求めた。理由は、原告が審査請求を経ていないから、というものである。

仙台市は母子4人の生活費を止めた上で、その処分に対して司法の場で争おうとした被害者の訴えに対し、「そもそもこの訴訟を受理するな」と言った。

審査請求前置──行政が法を使って救済の道を塞ぐ構造

仙台市が訴えの却下を求めた根拠は、生活保護法第69条に定められた「審査請求前置主義」である。

通常、行政処分に不服がある場合、審査請求(行政に不服を申し立てる手続)と取消訴訟(裁判所に訴える手続)のどちらを先にやってもよい。行政事件訴訟法第8条1項が定める自由選択主義である。

しかし生活保護法は例外を設けている。第69条により、審査請求に対する裁決を経た後でなければ、裁判所に訴えることができない。まず行政に対して「あなたの処分は不当です」と申し立て、行政の回答を待ってからでなければ、裁判所の門は開かない。

この審査請求の審査先は都道府県知事──本件では宮城県知事──である。市の処分を、県が審査する。独立した第三者機関ではない。行政が行政を審査する構造である。

2014年の行政不服審査法全面改正に際し、総務省は「国民の裁判を受ける権利を不当に制限している」との批判を踏まえ、審査請求前置主義の廃止・縮小を進めた。従前96の法律で採用されていた前置主義は、68の法律で廃止・縮小された。

しかし生活保護法第69条は廃止対象に含まれなかった。生活保護の処分は生存権に直結するにもかかわらず、「大量処分の裁判所負担軽減」という行政側の都合で前置主義が維持されている。

この制度設計が何を意味するか。

審査請求の処理期間中、保護費は停止されたままである。審査請求に対する裁決期限は、生活保護法65条では50日。みなし棄却規定もあり、その間、母子4人は保護費なしで生きなければならない。審査請求の結果を待つ間に生活が破綻すれば、「適正な手続」を経ること自体が不可能になる。

仙台市はこの法の設計を利用した。自ら保護費を止めておきながら、被害者が裁判所に助けを求めると「手続を踏んでいない」と言って訴えを却下させようとした。止めた側が、止められた側の争う道を塞ぎにいっている。

生活保護法第69条は、国の立法の問題である。しかし仙台市がそれを加害の道具として法廷で振りかざしたのは、仙台市自身の選択である。

原告側の主張

原告側代理人の太田伸二弁護士は以下の論点を提示している。

車は女性の所有ではなく、父親から借りたものである。本人の所有物ではない車の処分を求める権限は行政にはない。公共交通機関では片道約1時間半かかり、シングルマザーが小学生3人を抱えた状態で通勤を継続することは事実上不可能である。現行の自動車保有要件が、ひとり親世帯の現実に対応できていない。

なお、仙台地裁は審理開始前の2026年3月3日、判決言い渡し後2か月までの保護停止処分の執行停止を認めている。裁判所が緊急性を認めたということは、仙台市の処分がそのまま継続すれば母子4人の生活に回復し難い損害が生じると司法が判断したことを意味する。仙台市の処分の過酷さを、裁判所自身が認めた形である。

本件は係争中であり、裁判所の判断はまだ示されていない。しかし、裁判所がどのような判断を下そうと、仙台市が母子4人の生活費を止め、法廷で「適法」と主張し、訴えの却下を求めたという事実は変わらない。

責任の所在

責任区分 名前・組織 役職 責任内容
処分権者 若林区保健福祉センター所長(原 孝行) 福祉事務所長 保護停止処分の決定権者
若林区長 髙橋洋子(たかはし ようこ) 仙台市若林区長(2024年4月着任) 区行政の責任者
行政の最高責任者 郡和子(こおり かずこ) 仙台市長(3期目) 市として「適法」と主張する最終責任者
法廷での主張 仙台市(被告) 「裁量の逸脱濫用なし」「適法」と答弁、訴えの却下を請求
制度設計 国(厚生労働省・国会) 生活保護法第69条(審査請求前置主義)の維持

ソース


本記事は公開報道、訴訟記録の報道、および公的資料に基づく。本件は係争中であり、裁判所の判断は示されていない。記載した事実関係は、各ソースの報道内容に基づくものである。

行政が、母子4人の生活費を止め、法廷で「適法」と言い放ち、訴えの却下を求めたことは仙台市の恥です。

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